【ご挨拶】 2014年1月
農的社会デザイン研究所 代表 蔦谷栄一
この11月に農的社会デザイン研究所を立ち上げました。これまで農林中央金庫で25年、(株)農林中金総合研究所で17年、農業金融、そして食料・農業・環境を中心とした調査研究に携わってきました。42年、組織で仕事をしている間に時代は変貌し、我々を取り巻く環境は大きく変化してしまいました。
すなわち経済がすべてに優先される社会となり、非経済的価値は軽視されるようになってしまい、個人にも社会にも“ゆとり”が失われるとともに、格差拡大が進行してきました。そして人と人とのつながりが薄れ、人と地域との距離も遠くなり、コミュニティはすっかり貧困化してしまいました。
こうした流れは都会だけでなく農村にも浸透し、農村の活力低下が農業生産基盤の維持を困難にし、持続的な食料生産・供給に不安をもたらすと同時に、里山を含めた世界に冠たるすぐれた田園風景・景観を失いつつあるのが現状です。
組織での仕事を終えるにあたって、次代に残すべきものは何か、未来への責任を果たしていくために最優先すべきものは何か、あらためて問い直したときに浮かんできたのが、組織ではマクロ的視点からのアプローチが当然とされていたものを、もっと現場、地域に入って、現場、地域の立場からの情報発信、提言へとスタンス・足場を移していくことのへの思いでした。
“世間は変えられなくても地域から変えていくことはできる”
を、自らの足元から実践していくことから再出発し、食料・農業生産の持続、環境や田園風景の維持、そしてコミュニティの復活を地域レベルで実現していきたい、と考えています。生命原理を無視しては成り立たない農業を大事にしていくことは、経済優先で合理主義・効率主義に傾きすぎた社会全体のバランスを回復していくことにも直結するのではないでしょうか。
とはいってもあまり肩ひじ張らず、頭でっかちにならず、あくまで体を動かし、大いに汗をかきながら、おもしろく楽しく地域活動にかかわっていきたいと思います。農的社会デザイン研究所は調査研究のための機関という以上に、志を同じくする地域で活動している人たちが情報交換し連携を強めていくためのプラットフォームであることを念願しています。
農的社会デザイン研究所を一人でも多くの皆様に気軽にご利用いただければ幸いです。
【農的デザイン研究所の活動全体について】
自ら運営している活動現場としていのちの畑、農土香の会、おむすびハウス、コミュニティカフェ石窯等があります。その活動詳細については、研究所概要および事業内容各ページに掲載のとおりですが、活動全体の連携イメージは下図のとおりとなります。